「うつ病」と聞いてどんなイメージを持ちますか?どこか他人事に聞こえてしまう方も多いかもしれません。しかし、年々増加していると言われているうつ病。世間的にうつ病が知られてきて、精神科への受診をする人が増えたことも1つの理由と言われていますが、厚労省によると日本では100人に6人がうつ病を経験していると言われ、決して少なくない心の病気です。
今回は、適応障害との違いや症状・治療方法など、うつ病についてお伝えしていきます。正しい知識を持っておくことで、小さなサインに気づくことができるかもしれません。
参考:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html(厚生労働省)
目次
うつ病は「気分障害」の1つ
まず、「気分障害」とは何でしょうか?あまり馴染みのない言葉かもしれませんね。
気分障害は「感情障害」とも呼ばれています。
喜びや悲しみなどの感情のことを、時間軸を少し長めに考えると「気分」と呼びます。気分障害は、”正常の範囲を超えた”気分の落ち込み、あるいは、高ぶりが一定の期間続くこと。その気分が「落ち込みが続いている状態」なのか、「高ぶっている状態」なのか、もしくは両方が交互に来るのかで下記3種類に分類されています。
①うつ病
長期にわたって悲しみを感じたり、過度に気持ちが塞ぎ込んでしまう状態
②躁病
喜びで過度に気持ちが高ぶってしまう状態
③双極性障害
①と②がどちらもあり、うつ状態と躁状態がどちらもある状態
うつ状態=うつ病?
「抑うつ(状態)」「うつ状態」「うつ病」など、”うつ”とつく似たような言葉を複数聞いたことがあるかもしれません。「抑うつ(状態)・うつ状態」は同じ意味で使用されていて、気分が落ち込んでいる状態のことを言います。
一方「うつ病」は、抑うつ症状などの症状が病的で、深刻な状態が続いていることを言います。
うつ病の原因は?
明確な原因はわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じていると言われています。また、ストレスフルな生活上の出来事が誘因となり、うつ病が発症することが多いと言われています。
うつ病の主な症状
・憂うつな気持ちになる
・意欲が低下する(これまでは簡単にできたことができない)
・これまで興味や関心があったことに対する興味や関心がなくなる
・これまで楽しいと思えていたことが楽しいと思えない
・睡眠障害
・焦りや集中力の低下
・食欲不振など
・原因の有無は問わない
・日常生活に支障を及ぼしている
その他に・・・周囲からみたサイン
・表情が暗い
・涙もろくなっている
・これまでと比較して反応が遅い
・これまでと比較して落ち着きがなくなっている
・お酒の量が増えたと話している
うつ病は、これらの症状が2週間以上続いている状態と言われています。
なお、よく間違われやすいものとして「適応障害」があります。この2つは、症状は似ていますが、原因や改善方法が異なります。
適応障害の場合:
明確なストレス源があり、ストレス源から離れると症状が改善することが多いです。
うつ病の場合:
明確なストレス源がないこともあります。ストレス源と思われるものから離れても、状態の改善がむずかしいことが多いです。
診断の際は、体に病気がないかの検査やこれまでの出来事など、あらゆることから総合的に判断されます。そのため、上記の症状があるからといって必ずうつ病とは限りません。
▼適応障害についてもっと知りたい方はこちら
うつ病の治療について
以下の3つを組み合わせて行うことが多いです。
1)まずは休む
仕事や育児、介護など、なかなか気軽に休める環境が作りづらい人もいらっしゃるかと思います。しかし、まずは体を優先させることが重要です。自宅が休める環境でない場合は、入院して治療を行うこともあります。
2)薬を使った治療
・抗うつ薬
・睡眠薬 など
3)薬を使わない治療
・認知行動療法:「物事に対する考え方=認知」の歪みをなおすための治療法。
・運動療法:軽めの運動が症状を軽減すると言われています。
保健師のReal Voice
「うつ病」「抑うつ状態」「適応障害」は、休職する方の診断書でも比較的多く見かけます。症状が強く出ているときは、思い切って休むという決断は必要です。
ただ、休む前に何かしらサインはあったと思います。その時に誰か相談できる人がいたらまた結果は違ったのかもしれない・・・と考えてしまうこともあります。
なかなか不調が小さい段階での相談はむずかしいかもしれません。しかし、放っておいてしまうと治療や改善に時間がかかることもあります。
気分が落ち込むことがちょっと増えたかもと思ったら、保健師としてはできるだけ気軽に相談してほしいなと思っています。