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「産後うつかも?」と思ったら。症状や対処法を公認心理師が解説

2022年7月1日

子育て中、気分のおちこみや気力の低下など、精神的な不安定さを感じていませんか?

「他のお母さんはもっと頑張っているのに…自分はなんでダメなんだろう」と落ち込んでしまうこともあるかもしれませんね。

当記事では、子育て中のうつの原因や具体的な対処法について、子育て中の公認心理師の目線でお伝えします。

産後うつについて

産後うつとは、産後に発症する気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などを主訴とする精神的疾患の一つです。

産後3か月以内に発症することが多いです。およそ10%程度の罹患率があると言われており、10人に1人がなる可能性があると考えると、珍しい病気ではありません。

具体的な症状としては、日常の生活でこれまで楽しいと思えていたことが楽しめなくなったり、興味がなくなったり、これまでできていた家事がスムーズにできなかったり、段取りが考えられなくなったりします。

参考:https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/

産後うつの症状

・イライラが止まらない
・日常生活や子どもへの関心が持てない、無気力
・わけもなく涙が出てくる
・憂鬱な気分がずっと続く
・自分を責めたくなる
・自分を傷つけたくなる
・十分な睡眠がとれない
・これまでできていた家事、趣味ができなくなる

産後うつの原因

産後うつの原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のようなことが言われています。

これまでのうつ既往歴

妊娠前や妊娠中にうつ症状の経験があると、産後うつにもなりやすいと言われています。また、家族にうつ病歴があった場合に、遺伝的な関連も言われています。

出産後に見られるホルモン濃度の急激な低下

妊娠中、出産後は女性ホルモンなどが急激に上昇したり低下したりします。そのことがメンタルに影響を与えると考えられます。

夫婦問題や家族関係が与えるストレス

家族からサポートが得られなかったり、経済的な不安、身体的な不安があるなどのストレスがうつの原因となることがあります。

妊娠に関連する問題や葛藤

望まない妊娠であったときや妊娠出産に関する不安などのストレスが原因となることがあります。

先ほどもお伝えしたとおり、産後うつは、決して珍しい病気ではありません。

妊娠や出産は、身体的にも環境的にも大きな変化があり、多くの人にとってストレスの要因となり得ます。

また、ホルモンの急激な変化がメンタルに及ぼす影響も大きいです。

そのため、これまでにうつ的な症状を経験したことがない人でも、産後うつにかかることは決して珍しいことではないのです。

参考:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E7%94%A3%E8%A4%A5%E6%9C%9F/%E7%94%A3%E5%BE%8C%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85

産後うつへの対処法

①専門家に頼ることでの対処(産婦人科、心療内科やメンタルクリニック)

もしこの記事を読んであてはまる症状があったら、できるだけ産婦人科や心療内科などに一度相談してみてください。

産後1か月健診では産後うつに関してのアンケートを行っている病院も多く、そのときに相談することできますよ。抑うつ的な症状を抱えたまま生活すると、より悪化することがあります。

もしお薬に抵抗がある場合は、医師に相談すれば症状に合わせた対処法を考えてくれますし、カウンセリングで話を聞いてもらうこともできます。希望を伝えられますので安心してくださいね。

産後うつは珍しいことでは決してありません。症状があるときは、産婦人科、心療内科、メンタルクリニックなどに相談してみてくださいね。

②自分の考え方を変えることでの対処

症状が酷くなく、まずは自分で対処したい場合についてお伝えします。

例えば、「もっと育児をちゃんとしたいのに取り組めない…」「他の人と同じようにできない…」など自分を責めてしまうこともありますよね。そんなときは、自分ができたことにできるだけ焦点をあてるようにしましょう。

まずはお母さん自身が動かずに身体を休めることも大事なことですよ。「休んでしまった」と自分を責めるのではなく「休めた!」と褒めてあげて、考え方を変えるように意識してみるとよいですね。

②夫婦間でできることでの対処

産後は睡眠不足になりやすく、お母さん一人だけで育児することは大変です。できるだけパートナーにも手伝ってもらいましょう。乳幼児期のお父さんへの育児の関わりが、その後のお母さんからのお父さんへの愛情を高めるという研究データもあります。また父親の育児参加が子どもの社会性を高めるということも調査結果として出ています。

パートナーに助けてもらうことで、自分が助かるだけでなく、子どもの発達にとっても良い影響があり、夫婦関係もより良いものになっていきます。ですので、積極的にお願いしてみましょう!

③周りの人にお願いできる対処

もし家族や友人、職場の人など信頼できる人がいれば辛い気持ちを話してみてくださいね。ただ話しを聞いてもらうだけでも、心が軽くなります。辛い気持ちを一人で抱え込まず、周りの人に話してみてくださいね。

受診の目安

憂鬱で泣きたい気持ちやイライラした気持ちが一日中続く、赤ちゃんをかわいいと思えない、食事がとれない、もしくは過食してしまう、不眠症状が続く...など、自分が「しんどい」と感じた時は一度医療機関への相談を考えてみてくださいね。

産後うつは自然と落ち着いていくケースが多いですが、辛い状況が続くとどんどん悪化していきます。できるだけ早期の受診をおすすめします。

ただ、産後は子どもの世話や自分の身体を休めることに精一杯でなかなか受診することが難しいかもしれませんよね。もし家族などに見てもらえない場合は、有料のベビーシッターの利用も一つかもしれませんね。

また、個人的経験から言うと医療機関は赤ちゃん同席が可能な場合も多いです。医療機関に確認して、可能だったら一緒に受診することもできますよ。辛い気持ちを我慢するより、受診を一度考えてみてくださいね。

公認心理師からの一言

出産後は身体面のダメージが大きく、生活リズムも変わります。変化が心に及ぼす影響は大きいです。私自身も出産後、面会に来ていた家族が病院から帰るときに、わけもなく不安が押し寄せて涙が出てしまったことがあります。

言葉にできない不安って辛いですよね。産後の辛さや不安は徐々に軽快することが多いですが、できるだけ溜め込まず言葉にしてみてくださいね。家族や医療者もきっとサポートしたいと思っているはずですよ。勇気を出して相談してみてくださいね。

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Miho

大学院にて子どもの発達や母子愛着について学んだ後、臨床心理士・公認心理師になりました。児童相談所や教育相談センターで親子相談に関わった後、自らも出産し実際に子どもを育ててみて、その大変さを感じています。多くの人が楽しく子育てできるようにお手伝いすることが自分の夢です。

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