生理前のつらい症状といえば、すべてPMSだと思っている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、その中でも心の症状が強く出る「月経前不快気分障害」(PMDD)についてご紹介します。症状によっては回復後に「なんであんな行動を取ったんだろう・・」と後悔してしまう方もいらっしゃるのです。あまり馴染みのない方も多いと思いますが、知っておくだけでいざという時に役に立つかもしれません。ぜひ、一度読んでみて下さい。
目次
「月経前不快気分障害」PMDD(premenstrual dysphoric disorder)とは?
PMSの症状の中でも、心の症状が際立って強くでることにより、日常生活や社会生活に影響が及んでいる状態のことです。
PMS同様、【生理が始まる5日間に症状がおき、生理開始後4日までに症状がほぼなくなる】ということがポイントです。日本では、重症なPMDDを抱える人は、月経がある女性のうち1%と言われています。100人に1人なので、さほど珍しくはないことがわかります。
「月経前不快気分障害」(PMDD)はなぜ起きるの?
PMS同様、明確な原因はわかっていません。ホルモンの変動や肥満、生活習慣なども関連していると言われています。
「月経前不快気分障害」(PMDD)ってどんな症状?
基本的にはPMSと同じような症状が出ます。PMSと違うところは、「精神症状が強く出て、日常生活や社会生活に支障が及んでいる状態」という点です。
【精神症状】
・著しい感情の不安定さ(突然悲しくなる、突然涙もろくなる、拒絶されることに敏感になる)
・著しい苛立たしさや怒りや対人トラブルの増加
・著しい気分の落ち込み(抑うつ感)、著しい絶望感、著しく自分へ批判的になる
・著しい不安や緊張、著しく攻撃性が増す
【体や行動における症状】
・仕事や学校や趣味に対する興味が減る
・集中できない
・だるさや疲れやすい、無気力感
・食欲の著しい変化(極端に増すもしくは極端に減る)、甘いものなど特定の食べ物を食べたくなる
・寝すぎる/寝られない
・コントロールができない
・その他、胸のはりや関節痛、筋肉痛、体重が増えるなど
なお、これらの症状が月経周期に関係なく起きる場合は、PMDDではなくストレスによる影響やその他のメンタル不調の可能性があります。
PMDDは、PMSと同様、生理が始まるとともに症状は軽くなる・もしくは無くなることが大きなポイントです。そのため、生理が始まると「なぜあんな行動を取ってしまったのか」と自分の行動を理解できず、後悔する人も少なくありません。
「月経前不快気分障害」(PMDD)の治療方法
大きく分けて2種類あります。
①薬を使わない治療法
・カウンセリングや認知行動療法
・生活リズムを整える
・運動
・栄養のある食生活 など
②薬を使った治療法
・ホルモンのお薬(低用量ピルなど)
・各症状に対する対症療法治療(痛みに対して痛み止め、むくみ対して利尿剤、精神安定剤を飲むなど)
・漢方薬
・抗うつ薬(SSRIと呼ばれる薬) など
これまで、「月経前不快気分障害」(PMDD)はホルモン剤だけでは効果が出ないこともあり、アメリカでは抗うつ薬が最初に選ばれる薬でした。しかし、最近は新しい低用量ピルがPMDDの症状を軽くするとの報告もあります。
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保健師のReal Voice
PMDDを甘く見ないほうが良いです。「月経前不快気分障害」(PMDD)によって、周りから見て「明らかにおかしい行動」を取ってしまい、その結果取り返しのつかない対人トラブルが起きてしまうこともあるのです。
ホルモンの仕業ですので、もちろん本人は悪くありません。
しかし、PMDDの認知度が低いことから治療に結びつかない・パートナーからの理解が得られないといったことがまだまだ多いのが現状です。
1人でも多くの方がPMDDを知って受診をし、パートナーや周囲の方から理解が得られることを願ってやみません。